そのイヤホンを外させたい

そのイヤホンを外させたい

物語を糧に生きるアラサー男子の方法序説。文芸や出版メディアの趨勢について気になったことを書いていきます。

読書

小さな悪を滅すること/『ゴブリンスレイヤー』から読み取る時代の空気感

彼は「ゴブリン退治は人気がない」と、言葉少なに教えてくれた。 農村の依頼だから報酬が安く、新人向けだから熟練者は選ばない。 (p77より引用) 蝸牛くも『ゴブリンスレイヤー』を読んだ。 ゴブリンスレイヤー (GA文庫)作者: 蝸牛くも,神奈月昇出版社/メー…

ストロングセンスオブヒューマーのある小説家/ジェーン・オースティン『自負と偏見』

自負と偏見 (新潮文庫)作者: J.オースティン,Jane Austen,中野好夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1997/08/28メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 48回この商品を含むブログ (60件) を見る ジェーン・オースティンの作品を好んで読む男性は多くはないだろう…

『まおゆう』の感想/全てのWEB小説が異世界に逃げてるわけじゃない。

だいぶ今更だけど、橙乃ままれ『まおゆう』を読んだ。 わりと長めの作品なので、とりあえず1巻のみ。まおゆう魔王勇者 (1) 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」作者: 橙乃ままれ,toi8出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン発売日: 2010/12/29メ…

不安に陥りがちな人は認知行動療法を学んで心の調整力を高めよう。

こんにちは山中です。最近は私生活で色々と変化があり、メンタルを崩しがちな日々を過ごしていました。そんな中、気持ちが折れないために読んだ認知行動療法の入門書が結構良かった。マンガでやさしくわかる認知行動療法作者: 玉井仁,星井博文,深森あき出版…

わたしたちの住む街には得体の知れない何かが潜んでいる/乙一『GOTH』

エッジの効いた短編小説が読みたいなぁと思った。手に取ったのは、乙一の『GOTH』。GOTH 夜の章 (角川文庫)作者: 乙一出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2005/06/25メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 79回この商品を含むブログ (420件) を見るGOTH 僕の章 …

京都を舞台にしたポップな哲学散歩小説/原田まりる『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』

前に本の感想を書かせてもらった哲学ナビゲーターの原田まりるさんが、小説を出したということで買って読んでみました。ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。作者: 原田まりる出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2016/09/30メ…

現役作家による贅沢な世界文学講義/池澤夏樹『世界文学を読みほどく』

池澤夏樹『世界文学を読みほどく』が、めちゃくちゃ面白かったので感想を書く。 世界文学を読みほどく (新潮選書)作者: 池澤夏樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/01/15メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 62回この商品を含むブログ (55件) を見る 本…

甘美なる歌声は邪魔しない。/鹿島茂『「悪知恵」のすすめ』

こんにちは山中です。トランプ大統領による外国人入国制限のニュースがメディアを騒がせていますね。 悪い意味で期待を裏切らないというか、今回の出来事をきっかけにこの先ますます世界情勢は泥沼化していくでしょう。 今回の話題含め、外交問題に関する記…

「逃げる」という勇者の戦略

北方謙三による『三国志』、通称「北方三国志」は、サラリーマンの男性を中心によく読まれている印象がある。僕も昨日第6巻『陣車の星』を読み終えたところなのですが、ここまで来るのにおそろしく時間が掛かっています。三国志 (6の巻) (ハルキ文庫―時代小…

言葉の短剣。ラ・ロシュフコー公爵の黒光りした箴言から世間を学ぶ。

16世紀~18世紀のフランスにはモラリストと呼ばれる文学者が登場し、人間の生き方についての考察を自由な文章形式でまとめました。 そんなモラリストの中に、ラ・ロシュフコー公爵がいます。自分は彼の『箴言集』が好きです。なぜなら、彼の箴言はとても的を…

花田清輝は今日性のある批評家だからもっと読まれていいと思う

年末年始の休みもあっという間に終わり、いつ果てるともない生活に帰還しています。 年越しは実家で紅白観たり、家の近くの神社で甘酒飲んだり、蕎麦食ったり雑煮食ったりと、平均的な日本人の正月を過ごしていました。 本来なら、2016年の内に「今年読んで…

ジュブナイルの衣をかぶった人生哲学の書/小野不由美『十二国記 月の影 影の海』

現在中学2年生で卓球部の練習に燃えている従姉妹の娘に好きな小説をたずねたら、「十二国記!」という答えが返ってきた。月の影 影の海〈上〉―十二国記 (新潮文庫)作者: 小野不由美,山田章博出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/06/27メディア: 文庫購入: 6…

あいまいな日本の“文学”/さやわか『文学の読み方』

文学の読み方 (星海社新書)作者: さやわか出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/09/22メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る さやわか『文学の読み方』を読んだ。 さやわかさんの本を読むのはこれが初めて。 ゲームとかアイドルとか秋葉カルチャ…

100冊の自己啓発本よりも生きる糧になる1冊ー太宰治『斜陽』

フリーター時代、同僚にライトノベル作家を目指してる奴がいた。 「なんでわざわざ暗い話を書くのか、それがよくわからないんすよねー」 彼はいわゆる純文学というものに理解がなく、新人賞受賞を目指して虚淵玄の劣化版みたいな作品を書いていた。 当時のお…

絶対他力と自己啓発

『歎異抄』を読んでみた。講談社学術文庫に入ってる梅原猛全訳注のやつです。 歎異抄 (講談社学術文庫)作者: 梅原猛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2000/09/08メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 22回この商品を含むブログ (37件) を見る 本書には原文に加…

非恋の時代に心を病むことについて/トイアンナ『恋愛障害』

交際相手のいない男女の割合が過去最高を記録したというニュースが話題になっていた。 本格的な「恋愛氷河期」の時代がやってきたのかもしれない。 結婚願望のある人が8割を超えるというのは、多くの人が現在恋愛をしたくてもできない状態にあることを如実に…

新刊でも古典でもない普通の小説が読みたい

こんにちは、山中タカです。 ネット上には多くの書評が挙がっていますが、そのほとんどがごく最近出版された新刊本であったり、もしくは誰もが認める有名な古典作品についてのものであったりと、数は多いわりにバラエティに乏しい傾向にあります。 個人のブ…

恋愛工学と現代のビルドゥングスロマン

お盆休み、ナンパスキルの復習として藤沢数希の『ぼくは愛を証明しようと思う。』を読み返していました。 ぼくは愛を証明しようと思う。作者: 藤沢数希出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2015/06/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 初読の…

二村ヒトシ/川崎貴子『モテと非モテの境界線』の感想

モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談作者: 二村ヒトシ,川崎貴子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/06/23メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 『モテと非モテの境界線』という対談集を読んだ。 著者(というより対談し…

古さを感じさせない時間術の名著/アーノルド・ベネット『自分の時間』

自分の時間 (単行本)作者: アーノルドベネット,Arnold Bennett,渡部昇一出版社/メーカー: 三笠書房発売日: 2016/05/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る アーノルド・ベネット『自分の時間』を読みました。 100年以上前に…

既刊本の書評も悪くない

わたしは本好きなので、このブログも自然と読んだ本の感想が多くなっています。 ことネットに関してなるべく多くの人に記事を読んでもらいたいなら、出たばかりの話題の本を逃さずレビューしていくのが一番手っ取り早い方法でしょう。 わたしも自分にでき得…

絶望から出発せよ/和佐大輔『テトラポッドに札束を』

テトラポッドに札束を (単行本)作者: 和佐大輔出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2013/10/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 12歳の時、海水浴中に海に飛び込みテトラポッドに激突、頚椎損傷。身体の胸から下が麻痺し車椅子生活に。17歳でネットビ…

女性作家のデビュー作二つ

松浦理英子の『葬儀の日』と山崎ナオコーラの『人のセックスを笑うな』を続けて読んだ。1978年、2004年と発表年に隔たりはあるが、作品の圧倒的存在感によって文芸シーンに新風を巻き起こした点で共通している。女性作家のこのような天才的なデビュー作には…

【まとめ】2015年に読んで面白った本10冊

タイトル通り。 まとめておきます。 フォックスファイア作者: ジョイス・キャロル・オーツ,Joyce Carol Oates,井伊順彦出版社/メーカー: DHC発売日: 2002/07メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (3件) を見る(その1)ジョイス・キャロル・オ…

ちゃんとモテる力/二村ヒトシ『すべてはモテるためである』

すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)作者: 二村ヒトシ,青木光恵出版社/メーカー: イースト・プレス発売日: 2012/12/02メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 125回この商品を含むブログ (34件) を見る ネット上の性愛カテゴリーをベースにものを考えてる人…

恋愛結婚からの脱却/牛窪恵『恋愛しない若者たち』

テレビにも出演する有名な評論家による一冊。 全体的には「ちょっと冷めた若者像」を提示するありがちな若者論に終始しているので退屈な部分もあるが、恋愛市場に関する膨大な調査量はさすがで勉強になった。恋愛という書き手の主観や経験に左右されやすいテ…

男と女の心の「穴」ー『淑女のはらわた』を読んで

淑女のはらわた 二村ヒトシ恋愛対談集作者: 二村ヒトシ,犬山紙子,小明,川村エミコ,まんしゅうきつこ,荒牧佳代,はあちゅう,ジェーン・スー出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2014/02/13メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る 前か…

「10冊の本で自分を表現する」:やらない理由が見当たらない

おハロー。 「本棚の10冊で自分を表現する」と、こうなった - ぐるりみち。 本10冊で自分を表現だと…。 なにこれ面白そうw やらない理由が見当たらないので、承認欲求まみれのぼくの10冊を紹介します。 自分でも意外なほど昔の小説が多くなってしまった。も…

岡崎京子『ヘルタースケルター』

ヘルタースケルター (Feelコミックス)作者: 岡崎京子出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2003/04/08メディア: コミック購入: 46人 クリック: 3,901回この商品を含むブログ (334件) を見る 北条かやさんが、整形する女性たちの姿を社会学的な見地から追った本を…

「禁止」と「侵犯」の哲学ージョルジュ・バタイユ『エロティシズムの歴史』

エロティシズムの歴史: 呪われた部分 普遍経済論の試み 第二巻 (ちくま学芸文庫)作者: ジョルジュ・バタイユ,湯浅博雄,中地義和出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/07/06メディア: 文庫 クリック: 13回この商品を含むブログ (8件) を見る 人間の性と死の…

もの思いこそ人生ー吉田兼好『徒然草』

徒然草 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)作者: 今泉忠義出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川学芸出版発売日: 2013/09/12メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 現代語訳で読んでいき、気に入った一節だけ原文を参照した。角川ソフィア文庫よ、ありがと…

実感としての心地良さー高石宏輔『あなたは、なぜ、つながれないのか』

恋愛工学の創始者の本に続いて、ナンパ界のカリスマの新刊を読んだ。 高石さんらしいしなやかな本である。この本を読んでいる時間や空間そのものがカウンセリングといった感じ。 他者と触れ合うということを根本から問い直し、自分の殻に閉じこもったパター…

ドラッカーを食わず嫌いしていた

これまで、ドラッカーといえば『もしドラ』、ビジネスの世界で凄い人くらいの認識しか持っていなかったのだが、実際に著作に当たってみると想像とはかなり違っていて驚かされた。ドラッカーって思想家なんですね。ビジネス書なんかで取り上げられることが多…