そのイヤホンを外させたい

男と女の心の「穴」ー『淑女のはらわた』を読んで

淑女のはらわた 二村ヒトシ恋愛対談集

淑女のはらわた 二村ヒトシ恋愛対談集


前から目を通したいと思っていた二村ヒトシ対談集『淑女のはらわた』をついに読んだ。


二村監督と7人の女恋愛論者。みなさん色んな形の恋愛してるんですね。女性って男性と違ってヤッた人数以外の点で自分の恋愛遍歴に箔をつけることができていいよね。対談相手が全員男だったらこんなにバラエティ豊かな内容にはならないでしょう。


こんな名言があった↓

二村: 僕は「全ての男性は気持ち悪くて、すべての女性は面倒くさい」んじゃないかって思います。高学歴男性の話にもつながるんですけど、男って「自分が気持ち悪い存在であることが、世間にバレていない」とタカをくくっている、そこが気持ち悪い。 p22


本書の中で二村さんが一貫して言わんとしてるのは、男にしろ女にしろ「おのれのキモさを受容できてない奴が一番キモい」ということだと思う。そして日本のような男性優位社会においては、男の側の方が自分のキモさに気づけていないので彼らのインチキな自己肯定に女性の側が翻弄されているケースが多いということ。


前から思ってたけど、女にモテる男って人間として成熟してない奴が圧倒的に多いですよね。いや、ぼく自身偉そうなこと言えるほど大人ではないのだけれど、もし不特定多数の女性とセックスするヤリチンになりたかったら、「優しい男」でいるよりも「ふてぶてしい男」になった方がずっと近道な気がする。もちろん優しさも大事だけれど、それはふてぶてしさの後にくるものでなければならない。


なぜ男のふてぶてしさが一定数の女に刺さるのか。それはおそらく、自己肯定ができていない女はインチキ自己肯定した男からの抑圧により上辺だけの自己肯定ができるからだ。


ややこしいな。


二村さんが他の著書含め何度も口にする「心の穴」というキーワードがあります。

ある人が恋愛やセックスや人生の場面で「なぜ、そういうふうに行動したり、そういうふうに考えてしまうのか」の根っこには、その人が子供の頃の親きょうだいとの関係が埋まっている。“悪い親”だったからとは限らない。もし理想的な家庭で育ったとしても子供の心には必ず穴が空く。つまり、すべての人間の心には穴が空いていて、その穴がその人の欠点であり魅力である。 p5


ふてぶてしい男というのは、自分の心の穴に気がつかないかもしくは収入や車や酒などの表面的なもので穴を埋め立てようとする。その一方で女も心の穴をもっており、彼女たちは自分勝手な男に依存することによって相手と同じように自身の穴を埋めようとする。しかし、穴は完璧に塞がることはないので結果依存から脱却できず、いつまで経っても良い恋愛ができない。


じゃあどうすればいいのか?


自分の心にポカンと空いた穴から目を背けてあたかも存在しないかのように振る舞ったり、他人の穴をほじくり返すことで自分の穴を埋めようとするのは不毛でしかない。たぶん大事なのは、最初は居心地が悪くても自分自身の穴をじっと見つめることだ。その輪郭がだんだんくっきりと見えてきて深さも想像できるようになったら、他人の穴も前よりはよく見えるようになるんでしょうね。きっと。