そのイヤホンを外させたい

二村ヒトシ/川崎貴子『モテと非モテの境界線』の感想

モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談

モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談



『モテと非モテの境界線』という対談集を読んだ。


著者(というより対談してる人)は、AV監督の二村ヒトシと、働く女性のサポートを事業の根幹にすえる人材会社を経営する川崎貴子


前者にについては過去に別の著作を読んで書評も書いているので知っていました。



が、後者の存在はこの本を読むまで知りませんでした。出会いに恵まれない女性ってわりと多いんですね。


独身男性として普通に暮らしてる分にはそういった女性の方々とは面白いほどエンカウントしないので、川崎さんがやられているような独身女性向けコンサルティングが需要があること自体新鮮な驚きがありました。


さて内容はというと、二村さんの著作を既にいくつか読んでいる身としては、それほど目新しい要素はないかなと思った。いつも通り、幼児期に形成される「心の穴」の理論を前提に、恋愛市場における男女のマッチングの困難さの確認に多くが割かれている。川崎さんは、自立した女性という立場から男性にありがちなキモい自己肯定を客観的にビシビシ糾弾する役割といった感じか。


二人の対談以外にも現実の独身男性の相談を受けたりと色々やってるのですが、それらを通して結局なにを言ってるのかと言えば、他人基準ではなく自分基準をちゃんと把握した上で恋愛や結婚はした方がいいよ、ということなのだと理解しました。


本書のタイトル通り、世の中にはモテる人と非モテの人の2種類がいることになっていて、パッと見ではその違いは明らかに感じられるのだけど、実際には両者の線引きはそう簡単にできない。なぜなら、「心の穴」への適切な対応が取れてないがゆえに不毛なモテ方をしてしまう人も存在するからだ。はた目には異性に不自由しないように見える人が、内面的には非モテのそれと全く同じ躓きがあるゆえにいつまで経っても自分にピッタリの相手に巡り会えないという事態も決して少なくないのである。


僕は、そのような不毛なモテスパイラルの後にはわりと深刻な女性不信が待っていることは分かっているつもりです。二村さんが理想としているようなお互いの「心の穴」をおざなりにすることのない異性との本来的な触れ合いが実現できれば、金などなくてもかなり幸福度の高い人生を送れるでしょうね。それはもう間違いない。


だがしかし、
それ結構ムズクね?
とも思うのである。やはり。


それができたら話は早いというか、逆にそれができないからこそ、女遊びにハマったり婚活塾で金ふんだくられたりするのではないかと思う次第である。卵が先か鶏が先かという話になっちゃうので恐縮ですが。


でもまぁ、本書でお二方が言うようにベストな恋愛と結婚のあり方ってそれこそ人それぞれなので、理想の恋愛のあり方を言葉で定義しようとしてる自体マニュアル思考に陥っている証左なのかもしれません。やっぱ難しいわ。


以上、簡単な感想でした。