そのイヤホンを外させたい

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そのイヤホンを外させたい

文芸を糧に生きるアラサー男子のブログ。

新刊でも古典でもない普通の小説が読みたい


こんにちは、山中タカです。


ネット上には多くの書評が挙がっていますが、そのほとんどがごく最近出版された新刊本であったり、もしくは誰もが認める有名な古典作品についてのものであったりと、数は多いわりにバラエティに乏しい傾向にあります。


個人のブログについては、どれだけ多くの人が読んでくれるのかということを考慮すると、新刊と古典に集中するのは自然な成り行きであって現状仕方のない話です。


ですが、僕はもともと天邪鬼な傾向がありまして時々流行に抗うことをしないと気が済まないんですね。われながらSEO対策不得意だわ〜と痛感しております。笑


今日も仕事が早く終わったから書評でも書こうと思ったのに、手に取ったのは新刊でも古典でもなくコンテンツとしての強みに欠けるこんな昔の小説。


アンダー・ユア・ベッド (角川ホラー文庫)

アンダー・ユア・ベッド (角川ホラー文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
ある雨の降る晩。突然、僕は佐々木千尋を思い出した。19歳だった彼女と僕がテーブルに向き合ってコーヒーを飲んだこと。彼女の亜麻色の髪、腋の下の柔らかそうな肉、八重歯、透けて見えたブラジャーの色や形…9年も前の、僕の人生のもっとも幸福だった瞬間―。そして僕は、佐々木千尋を捜してみることに決めた。もう一度、幸せの感触を思い出したいと願った―。それは盲目的な純愛なのか?それとも異常執着なのか?気鋭が書き下ろす問題作。


今ちょうど半分まで読み終わったところ。過去にも書いたように大石圭はわりと好きな作家さんです。



本作では、学生時代にほんの少しだけ交流のあった女性に異常なレベルで執着し、彼女の人生を一人監視し続ける男の倒錯的な純愛が描かれます。


文体や登場人物の造型にこれといって実験的なものは見られないので評価の対象にはなりにくいのかなと思うのですが、職業作家的な無駄のないストーリーテリングには実社会と陸続きだからこその安定感、頼もしさがあって逆に僕ををホッとさせる。同じように日々の生活に片足突っ込んだ状態で疲弊している自分には良い慰めです。

敷石のひとつを裏返す。そこには、名もない虫たちがさざめいている。
たいていの人は、湿った石の下に生きるそんな虫たちの名を知らない。虫たちがどのように生まれ、何を食べ、いつどんなふうにして死んでいくのかを知らない。考えることもない。
ーーその虫たちの1匹が僕だ。 p6より


自分がこうしてブログに書かなきゃあらためて誰も書評なんかしないであろう普通の小説を何でもいいから無性に読みたくなる時期がある。今がそう。そんな時は決まってアタリに遭遇するのだからこれまた不思議なものですね。


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