そのイヤホンを外させたい

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文芸好き。ラノベやWEB発の作品まで視野に入れつつ、文学または物語の趨勢について考えたことを書いていきます。

『響~小説家になる方法~』5巻の感想

文学界に彗星のごとく現れた天才少女小説家の破天荒な活躍を描く漫画『響~小説家になる方法~』第5巻。


響~小説家になる方法~ 5 (ビッグコミックス)


この巻では、ついに芥川賞直木賞の受賞作が発表される。

大方の読者は予想がついているだろうからネタバレしてしまうが、響の処女作『お伽の庭』は、芥川・直木同時受賞という快挙を成し遂げる。漫画だと分かっていても痛快です。

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年に2回の芥川賞受賞作発表を楽しみにしているような人種は、響や候補に挙がった他の作家たちの賞をめぐる人間模様に共感を覚えるはず。


響と共に芥川賞を受賞するシングルマザー豊増幸。
肉体労働に従事しながら受賞を目指す候補常連の山本春平。
作家になる夢を抱きながらも、才能がないゆえに雑誌記者として自分をよしとするしか方法のない須田など、

作家志望にとっては決して他人事ではない憎めない人々が理想と現実の違いに煩悶する様はリアルだ。

才能ない奴に妬まれるのもひがまれるのも、天才の役割だろ。


と響に訴える須田の自宅の本棚に、数冊の小説ハウツー本(ディーン・R・クーンツ『ベストセラー小説の書き方』をもじったディーン・R・クィーツ『ベストセラー小説の作り方』とか)が並んでいるのが悲しい。

響は、生まれて初めて書いた小説で賞をとったシンデレラガールなわけですが、
彼女以外の普通の小説家(小説家になれた時点で普通ではありませんが)たちの涙ぐましい努力を見ていると、本当に才能って残酷だよなってしみじみと思います。

太陽の季節』、『限りなく透明に近いブルー』、『蛇にピアス』、『日蝕』などの巨大な才能の出現に阻まれて、日の目を見ずに消えていった作品と作者もあったのでしょうか。

天才の快進撃によって浮き彫りになる天才じゃない人間たちの等身大の文学的苦悩はホント容赦ないです。

また次巻で。

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