そのイヤホンを外させたい

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ブログはタブラ・ラサ

『響〜小説家になる方法〜』がマンガ大賞を受賞したのであらためて感想書く

響?小説家になる方法?(1) (ビッグコミックス)


前々から本ブログで感想を書いていた柳本光晴響〜小説家になる方法〜』がマンガ大賞2017大賞を受賞したので、今日は遅ればせながらこれまでの総括の意味で感想を書きます。


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響〜小説家になる方法〜』はこんな話

文芸の衰退を嘆く出版社の新人賞に、ある日募集要項をガンムシした手書き原稿が送られてくる。

開封もされずにゴミ箱行きとなった原稿を興味本位で読んだ女性編集者の花井は、『お伽の庭』と題されたそのアマチュアの小説に強い感銘を受ける。

作者の名前は鮎喰響。住所も年齢も職業も性別も電話番号も封筒には書かれてない。やる気あんのか? しかし、才能だけは本物なようだ。

鮎喰響の小説は出版界を、いや世界を変える。そう直感した花井は、何んとかして鮎喰と連絡を取り、掲載にこぎ着けようとするのだが……。

響〜小説家になる方法〜』は、純文学の世界に彗星のごとく現れた響という1人の天才少女の破天荒な活躍を描いた作品です。

主人公響の圧倒的ポテンシャル

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本作の一番の読みどころは、主人公響の他を寄せつけない圧倒的才能と彼女が引き起こすトラブルの数々だ。

生まれて初めて書いた小説『お伽の庭』で颯爽とデビューし、そのまま同作で芥川賞直木賞をダブル受賞してしまうという響のスター性は、まじめに「小説家になる方法」を模索している作家志望の人たちからするとあまりにも現実離れしているように映るかもしれない。

が、長い芸術の歴史において天才とはいつも一つの事件であり、才能の乏しい人間に対して容赦のないものだ。

本作では、響が書く小説の具体的な内容は読者に明らかにされないが、作品を読んだ人間全てを感動させ虜にする並外れた力量を彼女が持っていることは、周囲の反応を通じて間接的に読者に分かる仕組みになっています。

天才は顰蹙を買ってなんぼ

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小説家の高橋源一郎山田詠美の対談本に『顰蹙文学カフェ』というのがある。

その本の中で、顰蹙を買うのも新人作家の才能と言っている箇所があるのですが、「響」を読んでそれを思い出しました。

石原慎太郎村上龍舞城王太郎、作品含めて存在自体が顰蹙の的でしたよね。

山田さんが言うように、新人は常に「若者・バカ者・よそ者」であるべきで、顰蹙は優等生が買おうと思っても買えるものではありません。

その点、響は作品ではなく言動で顰蹙買ってるんだけど、新人作家としての資格は十分に備えていると言っていいでしょう。

顰蹙文学カフェ (講談社文庫)

顰蹙文学カフェ (講談社文庫)


天才少女との交流を通じて自負を取り戻していく文芸界隈の人々

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本作は普段小説、ましてや純文学なんて読まない人にもおすすめです。

なぜなら、読むと純文学が好きな人たちが何を考えてるのかがちょっと分かるからです。

本作における表の主人公を響とするなら、裏の主人公は、文芸を取り巻く現在の状況をある種の諦観と共に眺めている小説家や編集者たちです。

本音の部分では文学に対する理想がありながらも、低迷する出版業界を前にして知らぬ間に自分を殺していた人々。彼らが響という類まれなる才能と接触することによって否応なく変化し、失われていた何かを取り戻していく。その様子がそれぞれの立場で描かれているのが、いち文学好きとして親近感が持てます。

まとめ

もともと、マンガ賞をとる前から好きで読んでいた作品なので大々的に書店の棚に展開されるようなって嬉しいです。メディアミックスで実写映画になったらぜひ観に行きたい。