乳酸菌入りチョコレートの登場が意味するもの
少し前にロッテが「乳酸菌ショコラ」という商品を出した。
「チョコを食べながら栄養素を摂取できるなんてなんだか得した気分〜♪」
これは友達の女の子の発言(彼女は決してバカじゃない。ただ幸せを感じやすいだけ)。僕も確かにそうだなぁと感じてそこで話は終わったのだが、よくよく考えてみるとこれって大多数の人が考えている以上にエポックメイキングな出来事のような気がしてきた。
そもそも、開発者を除いてチョコレートに乳酸菌を入れることを望む人がこの世界に果たして何人いただろうか。
僕から言わせれば、チョコレートというのは嗜好品の王様みたいなもので、食べることによってその無駄な「甘さ」を味わうことさえできれば特に他の見返りは求めない。だから「乳酸菌はチョコで摂る時代」というキャッチフレーズに対しては、お得感以上に余計なことすんなよなという思いの方が強かったりする。
まぁ、乳酸菌が入った分甘さ控え目などといった酷な話ではないみたいなので味が良ければそれでいいとは思います。
ただ、既存のものに何らかの付加価値を与えてお得感を演出し、消費者の購買欲求に火を点けるこうした流れはあらゆる商品についても既に生じている。小説や漫画で言えば、「もしドラ」以降に目立つようになった「物語」+「何らかの専門知識」という作品群がそれに当たるだろう。
「物語」というのも単体では実生活では何の役にも立たない知識の集積だ。だが、そこに「マネジメント」とか「経理」とか「農業」とか「恋愛工学」とかすぐに役立つ情報を盛り込むことで読者にそれを読む理由を与えてやる。錯綜する情報化社会に生きる今の大衆にとって、消費の理由こそ最も欲しいものである。多くの人間は自分の欲望が正確に分かっていないから。その内、小説だけでは飽き足らず「詩を読むことは脳にいい」なんてトチ狂った主張が出てきても自分はそれほど驚かないと思う。
だってもうチョコにまで来たんだぜ、それが。チョコは甘い。無駄に甘い。ただ甘いだけ。それで十分だったはずなのに。
世の中の呼吸がどんどん浅くなっていく。
チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)
- 作者: ロアルド・ダール,クェンティン・ブレイク,Roald Dahl,Quentin Blake,柳瀬尚紀
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