そのイヤホンを外させたい

2016-01-01から1年間の記事一覧

これまでに読んだ舞城王太郎作品を振り返る

舞城王太郎『ビッチマグネット』を読んだ。ビッチマグネット (新潮文庫)作者: 舞城王太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/08/28メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る 芥川賞候補にもなった作品で、舞城さんの作品としては物語としてのハチ…

ジュブナイルの衣をかぶった人生哲学の書/小野不由美『十二国記 月の影 影の海』

現在中学2年生で卓球部の練習に燃えている従姉妹の娘に好きな小説をたずねたら、「十二国記!」という答えが返ってきた。月の影 影の海〈上〉―十二国記 (新潮文庫)作者: 小野不由美,山田章博出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/06/27メディア: 文庫購入: 6…

絶対他力と自己啓発

『歎異抄』を読んでみた。講談社学術文庫に入ってる梅原猛全訳注のやつです。 歎異抄 (講談社学術文庫)作者: 梅原猛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2000/09/08メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 22回この商品を含むブログ (37件) を見る 本書には原文に加…

『20歳の自分に受けさせたい文章講義』はアラサーが読んでも得るところが大きかった

量か質か。ブログを書いている人間なら、たびたび耳にするであろう二者択一だ。今のところ、量は質を凌駕するという考え方が優勢かと思います。量をこなさないと質も上がらないのでつべこべ言わず書け、ということですね。とはいえ、いかに早く大量に記事を…

非恋の時代に心を病むことについて/トイアンナ『恋愛障害』

交際相手のいない男女の割合が過去最高を記録したというニュースが話題になっていた。 本格的な「恋愛氷河期」の時代がやってきたのかもしれない。 結婚願望のある人が8割を超えるというのは、多くの人が現在恋愛をしたくてもできない状態にあることを如実に…

社会に対してベタになると死ぬ/トークイベント:宮台真司×二村ヒトシ『希望の恋愛学』を語る

先日、社会学者の宮台真司さんとAV監督の二村ヒトシさんによるトークイベント『希望の恋愛学』を語るに参加してきた。 場所は下北沢にある世田区立男女共同参画センターらぷらす研修室。変な名前。 日曜日は宮台先生とトークします。8/21(日)19:00~宮台真司…

二村ヒトシ/川崎貴子『モテと非モテの境界線』の感想

モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談作者: 二村ヒトシ,川崎貴子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/06/23メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 『モテと非モテの境界線』という対談集を読んだ。 著者(というより対談し…

乳酸菌入りチョコレートの登場が意味するもの

少し前にロッテが「乳酸菌ショコラ」という商品を出した。 「チョコを食べながら栄養素を摂取できるなんてなんだか得した気分〜♪」 これは友達の女の子の発言(彼女は決してバカじゃない。ただ幸せを感じやすいだけ)。僕も確かにそうだなぁと感じてそこで話は…

壇蜜の小説家デビューについて

壇蜜さんが小説を書いたんですね。 タイトルは『光ラズノナヨ竹』 前にも書いたけど、新人賞という正規のルートで小説家として出発するのではなく、あらかじめ小説とは異なるジャンルで知名度を得た人物が新人作家としてデビューするという仕組みは今後ます…

古さを感じさせない時間術の名著/アーノルド・ベネット『自分の時間』

自分の時間 (単行本)作者: アーノルドベネット,Arnold Bennett,渡部昇一出版社/メーカー: 三笠書房発売日: 2016/05/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る アーノルド・ベネット『自分の時間』を読みました。 100年以上前に…

匿名ブロガーの本懐

まだ記事数も十分ではないが、ブログの運営方針について現在思っていることをここらで書き留めておきたい。 わたしはブロガーがブログそのものについて言及することに全く抵抗を感じないし、むしろ必要なことだと考えています。小説家や詩人が「小説とは何か…

純文学ワナビーは必読。『響 〜小説家になる方法〜』の感想

厳しいーなぁ…っとに、なんだったら売れんだよ。芥川賞作家の肩書き持っててもこれだもんなぁ。つーか最近は、受賞作ですら厳しいっスからね。これ以上悪くなんねーだろって状況なのに、毎年きっちり更新してくれるなぁ。っとに、出版不況で漫画が売れねーと…

異世界転生小説は新時代のピカレスク小説なのか?

「異世界転生小説」をご存知だろうか? 宮部みゆきや東野圭吾といった一般文芸をメインに読んでいる人には聞きなれない言葉かもしれませんが、ライトノベルやウェブ小説の世界では王道の物語形式です。 簡単に説明すると、現代日本で暮らすパッとしない主人…

『進撃の巨人』を読んで個人の自由について考えた

進撃の巨人(19) (講談社コミックス)作者: 諫山創出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/04/08メディア: コミックこの商品を含むブログ (102件) を見る 『進撃の巨人』が面白い。何を今更?世間でこんなにも人気を集めているというのに。いや、それでもコミッ…

ブログ名変更のお知らせ

ブログの名前を変えた。失恋してロングヘアーをばっさり短く切る女子のような心境で。題名に私自身の願望が如実にあらわれているなぁ。理由は、約3ヶ月の間頑張ってみたもののまともに小説が書けなかったことによる。そんなバカな……。掌編めいたものはポツポ…

小説家、大石圭誕生秘話

大石圭、小説家。1993年『履き忘れたもう片方の靴』が文藝賞佳作となりデビュー。その後、官能、ホラー小説の分野で頭角を現し、角川ホラー文庫、光文社文庫を中心に数多くの作品を発表。2003年には、映画『呪怨』のノベライズも担当した実力派作家。デビュ…

小説を読むことは究極のライフハックである

小説家の保坂和志は、過酷な現代社会を個人が生きるために必要なことを訊かれて、「それはたとえばカフカを読むことだ」と述べている。ごく一般には、人生に役立つ知識やノウハウの意識的な蓄積こそ最も効率的な生存戦略だと信じられている。だがそれではダ…

女性作家のデビュー作二つ

松浦理英子の『葬儀の日』と山崎ナオコーラの『人のセックスを笑うな』を続けて読んだ。1978年、2004年と発表年に隔たりはあるが、作品の圧倒的存在感によって文芸シーンに新風を巻き起こした点で共通している。女性作家のこのような天才的なデビュー作には…

夢を追うことは合理的な生存戦略かもしれない

それでも、夢を追うしかない。/2016年の挨拶とブログ書籍化のお知らせ - デマこい!夢か安定か。そんな二者択一が個人の人生設計に大きく影響を及ぼす時代があった。現在でも、たて前としてその選択は残っていて、多くの人が昔と同じように考えより現実的な…

映画『ブラック・スワン』に見る面白い悲劇の作り方

ダーレン・アロノフスキー監督『ブラック・スワン』は、観る人によって評価が分かれるものの、ぼくは比類のない傑作だと思っています。 自分がこの作品の何に魅力を感じるのかというと、それは、力強いプロット、ラストの鮮烈なカタルシス、そして何よりも作…