そのイヤホンを外させたい

読書

【書評】海原育人『ドラゴンキラーあります』

ドラゴンキラーあります (C・NOVELSファンタジア) 作者: 海原育人,カズアキ 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2007/07 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 37回 この商品を含むブログ (59件) を見る 一昔前のラノベ。シリーズ全3巻完結。 1巻目の『…

【書評】ファン・ジョンウン『誰でもない』

誰でもない (韓国文学のオクリモノ) 作者: ファンジョンウン,斎藤真理子 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2018/01/18 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 初の韓国文学。 向こうで話題の作家の本邦初訳ということで、「韓国って位置は隣だけど小…

アニメを通じて戦後日本の思想的陥穽を浮き彫りにする/宇野常寛『母性のディストピア』

母性のディストピア 作者: 宇野常寛 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2017/10/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 2017年は、東浩紀『ゲンロン0 観光客の哲学』や國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』など、有名どころの批評…

【感想】窪美澄『ふがいない僕は空を見た』

ふがいない僕は空を見た (新潮文庫) 作者: 窪美澄 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2012/09/28 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 24回 この商品を含むブログ (46件) を見る 窪美澄『ふがいない僕は空を見た』を読んだ。 第8回 女による女のためのR-18文…

ストロングセンスオブヒューマーのある小説家/ジェーン・オースティン『自負と偏見』

自負と偏見 (新潮文庫)作者: J.オースティン,Jane Austen,中野好夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1997/08/28メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 48回この商品を含むブログ (60件) を見る ジェーン・オースティンの作品を好んで読む男性は多くはないだろう…

『まおゆう』の感想/全てのWEB小説が異世界に逃げてるわけじゃない。

だいぶ今更だけど、橙乃ままれ『まおゆう』を読んだ。 わりと長めの作品なので、とりあえず1巻のみ。まおゆう魔王勇者 (1) 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」作者: 橙乃ままれ,toi8出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン発売日: 2010/12/29メ…

わたしたちの住む街には得体の知れない何かが潜んでいる/乙一『GOTH』

エッジの効いた短編小説が読みたいなぁと思った。手に取ったのは、乙一の『GOTH』。GOTH 夜の章 (角川文庫)作者: 乙一出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2005/06/25メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 79回この商品を含むブログ (420件) を見るGOTH 僕の章 …

京都を舞台にしたポップな哲学散歩小説/原田まりる『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』

前に本の感想を書かせてもらった哲学ナビゲーターの原田まりるさんが、小説を出したということで買って読んでみました。ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。作者: 原田まりる出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2016/09/30メ…

現役作家による贅沢な世界文学講義/池澤夏樹『世界文学を読みほどく』

池澤夏樹『世界文学を読みほどく』が、めちゃくちゃ面白かったので感想を書く。 世界文学を読みほどく (新潮選書)作者: 池澤夏樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/01/15メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 62回この商品を含むブログ (55件) を見る 本…

甘美なる歌声は邪魔しない。/鹿島茂『「悪知恵」のすすめ』

こんにちは山中です。トランプ大統領による外国人入国制限のニュースがメディアを騒がせていますね。 悪い意味で期待を裏切らないというか、今回の出来事をきっかけにこの先ますます世界情勢は泥沼化していくでしょう。 今回の話題含め、外交問題に関する記…

言葉の短剣。ラ・ロシュフコー公爵の黒光りした箴言から世間を学ぶ。

16世紀~18世紀のフランスにはモラリストと呼ばれる文学者が登場し、人間の生き方についての考察を自由な文章形式でまとめました。 そんなモラリストの中に、ラ・ロシュフコー公爵がいます。自分は彼の『箴言集』が好きです。なぜなら、彼の箴言はとても的を…

ジュブナイルの衣をかぶった人生哲学の書/小野不由美『十二国記 月の影 影の海』

現在中学2年生で卓球部の練習に燃えている従姉妹の娘に好きな小説をたずねたら、「十二国記!」という答えが返ってきた。月の影 影の海〈上〉―十二国記 (新潮文庫)作者: 小野不由美,山田章博出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/06/27メディア: 文庫購入: 6…

絶対他力と自己啓発

『歎異抄』を読んでみた。講談社学術文庫に入ってる梅原猛全訳注のやつです。 歎異抄 (講談社学術文庫)作者: 梅原猛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2000/09/08メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 22回この商品を含むブログ (37件) を見る 本書には原文に加…

非恋の時代に心を病むことについて/トイアンナ『恋愛障害』

交際相手のいない男女の割合が過去最高を記録したというニュースが話題になっていた。 本格的な「恋愛氷河期」の時代がやってきたのかもしれない。 結婚願望のある人が8割を超えるというのは、多くの人が現在恋愛をしたくてもできない状態にあることを如実に…

二村ヒトシ/川崎貴子『モテと非モテの境界線』の感想

モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談作者: 二村ヒトシ,川崎貴子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/06/23メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 『モテと非モテの境界線』という対談集を読んだ。 著者(というより対談し…

古さを感じさせない時間術の名著/アーノルド・ベネット『自分の時間』

自分の時間 (単行本)作者: アーノルドベネット,Arnold Bennett,渡部昇一出版社/メーカー: 三笠書房発売日: 2016/05/11メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る アーノルド・ベネット『自分の時間』を読みました。 100年以上前に…

女性作家のデビュー作二つ

松浦理英子の『葬儀の日』と山崎ナオコーラの『人のセックスを笑うな』を続けて読んだ。1978年、2004年と発表年に隔たりはあるが、作品の圧倒的存在感によって文芸シーンに新風を巻き起こした点で共通している。女性作家のこのような天才的なデビュー作には…

ちゃんとモテる力/二村ヒトシ『すべてはモテるためである』

すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)作者: 二村ヒトシ,青木光恵出版社/メーカー: イースト・プレス発売日: 2012/12/02メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 125回この商品を含むブログ (34件) を見る ネット上の性愛カテゴリーをベースにものを考えてる人…

恋愛結婚からの脱却/牛窪恵『恋愛しない若者たち』

テレビにも出演する有名な評論家による一冊。 全体的には「ちょっと冷めた若者像」を提示するありがちな若者論に終始しているので退屈な部分もあるが、恋愛市場に関する膨大な調査量はさすがで勉強になった。恋愛という書き手の主観や経験に左右されやすいテ…

男と女の心の「穴」ー『淑女のはらわた』を読んで

淑女のはらわた 二村ヒトシ恋愛対談集作者: 二村ヒトシ,犬山紙子,小明,川村エミコ,まんしゅうきつこ,荒牧佳代,はあちゅう,ジェーン・スー出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2014/02/13メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る 前か…

「禁止」と「侵犯」の哲学ージョルジュ・バタイユ『エロティシズムの歴史』

エロティシズムの歴史: 呪われた部分 普遍経済論の試み 第二巻 (ちくま学芸文庫)作者: ジョルジュ・バタイユ,湯浅博雄,中地義和出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/07/06メディア: 文庫 クリック: 13回この商品を含むブログ (8件) を見る 人間の性と死の…

もの思いこそ人生ー吉田兼好『徒然草』

徒然草 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)作者: 今泉忠義出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川学芸出版発売日: 2013/09/12メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 現代語訳で読んでいき、気に入った一節だけ原文を参照した。角川ソフィア文庫よ、ありがと…

ドラッカーを食わず嫌いしていた

これまで、ドラッカーといえば『もしドラ』、ビジネスの世界で凄い人くらいの認識しか持っていなかったのだが、実際に著作に当たってみると想像とはかなり違っていて驚かされた。ドラッカーって思想家なんですね。ビジネス書なんかで取り上げられることが多…