そのイヤホンを外させたい

そのイヤホンを外させたい

物語を糧に生きるアラサー男子の方法序説。文芸や出版メディアの趨勢について気になったことを書いていきます。

これまでに読んだ舞城王太郎作品を振り返る


舞城王太郎『ビッチマグネット』を読んだ。

ビッチマグネット (新潮文庫)

ビッチマグネット (新潮文庫)


芥川賞候補にもなった作品で、舞城さんの作品としては物語としてのハチャメチャ度の低い、わりと落ち着いた中編かなと感じた。

きっと、芥川賞欲しかったから行儀の良さを重視したのかなと思う。

本作についての芥川賞選評で、高樹のぶ子さんが、

裏の裏は表、という屈折した回路をとりながら、少女の成長が語られる。

と述べていた。

この感じ、よく分かる。

舞城作品の語り手って本当に饒舌だ。

「そこは読者の想像にゆだねちゃってもいいんでない?」

って部分まで先回りして説明するので、
正直「くどいわ」、「ちょっとはこっちに考えさせろ」と辟易することも少なくない。

「まるで壁のようだ」とも評されたその独自の文体にも、この特徴は大きく反映されているように思う。
あらゆる面でマキシマムな小説家ですよね。



正直、本作に関してはこれといって言うこともないのだが、読んでいて、舞城王太郎ってやっぱり自分にとって特別な小説家だよなぁと感じた。

よく「一人の小説家と同時代を生きる喜び」について語った文章を目にするけど、正にそんな感じ。全作品を一気に読むほどのめり込む、ということはないものの、気が向いた時に作品を手に取って読んできた。


あらためて既に読んだ氏の作品を数えたら、なんと10作品!
「こんな読んだっけ?」って感じです。


舞城作品のあらすじってあっちゅー間に忘れるので雑な感想にはなりますが、せっかくなので読んだ順に並べておきますね。

煙か土か食い物

煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)


一番はじめに読んだ著者のデビュー作。
これは3回くらい読んだので、あらすじちゃんと覚えてます。
サリンジャーのグラース家サーガを意識した家族の物語。

本格推理なのか、純文学なのか、はたまたそれ以外の何かなのか?

なんてお行儀の良い疑問は後から浮かんだもので、読んでいる間はその破格の面白さにグイグイ引っ張られて寝食を忘れました。

これから舞城作品を読もうとしてる知人には、このデビュー作から読むことをおすすめしています。

阿修羅ガール

阿修羅ガール (新潮文庫)

阿修羅ガール (新潮文庫)

書店の棚でシェア率の高い新潮文庫に早い段階から入っていたこともあって、デビュー作の『煙か土か食い物』よりも本作で舞城初体験となった読者が多いのでは?

しかーし、残念なことに本作は最初に読む舞城作品としては不適当だ。

良作ではあるんだけど、作家性のようなものがやや希薄なので、新しさに耐性のない読者には悪ふざけとしか映らず、「そこまでか?」という感想を口にする人がたくさんいたのを記憶する。

好き好き大好き超愛してる。

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)


これも芥川賞候補作。
審査員の石原慎太郎から「タイトルを見ただけでうんざりした」と評されたものの、内容そのものはわりとおとなしめだったと思う。
愛の重みのようなものをSFチック(ラノベチック)に描いた連作です。

みんな元気。

みんな元気。 (新潮文庫)

みんな元気。 (新潮文庫)

個人的には、舞城作品の中ではこれがワースト1位。身を入れて読んでいないのでもはや全く内容を覚えていない。
阿修羅ガール』同様、本作から読みはじめるのはおすすめしません。

世界は密室でできている。

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

名探偵ルンババを主役にした青春ミステリー。読んでいる時は気づかなかったが、どこかで本作はサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』がモチーフになっていると知って、なるほどなーと思った。
その影響もあってか、数ある中でも最も瑞々しい読後感があります。

スクールアタック・シンドローム

熊の場所 (講談社文庫)

熊の場所 (講談社文庫)

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)


短編集から入るのもおすすめです。
特に『スクールアタック・シンドローム』は、現代の「暴力」がテーマになっていて、「ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート」は、もっと批評が書かれていいんじゃないかなぁと。

じゃあ、お前が書けよって話ですね。
そのためには読み返さないと。

暗闇の中で子供

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

デビュー作に続く奈津川家サーガ第二弾。本作の語り手は三男の三郎。

物語として破綻しまくっているので文庫本にもなっていない問題作だが、おれは舞城さんの作品の中でこれがダントツで好き!

まだ読んでない人は絶対読むべきだと思うわ。

ある種の真実は、嘘でしか語れないのだ

という一節に出会った時、それまで小説を読んできた自分を肯定されたような気がして嬉しかった。

九十九十九

九十九十九 (講談社文庫)

九十九十九 (講談社文庫)


他の小説家や評論家からは高く評価されているメタ小説。

やりたいことは説明されれば大体分かるんだけど、作者が本作を書く原動力の在所がおれにはイマイチよく分からなくて、終始言語ゲームに見えてしまった。

読む人によって好き嫌いが分かれる作品かなー。

ディスコ探偵水曜日

ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)

現時点での舞城さんの代表作にしてゼロ年代最強のバケモノ小説。

文庫本で上中下巻のある長編だが案の定ストーリーはグッチャグチャ。
中巻読んでる途中で「何と闘ってるか分からない」と思わず呟いてしまったほど。

けど、われわれの世代が共有している「ぼんやりとした壮絶」の感覚をこの小説がある程度まで背負っているのは確かだと思う。

「世界は密室でできている」というプレート(看板だっけ?)を掲げて世界に抵抗するディスコの姿がめっちゃエモーショナルで印象的。


好きな作品以外は内容忘却の嵐で恥ずかしい限りです。

が、各作品のおすすめ度に関してはそこそこ自信ありなので、これから舞城作品を読もうかなという方いたら参考にしてみてくださいな〜。