そのイヤホンを外させたい

映画『ジェーン』/カウガール姿のナタリー・ポートマンに女優としての円熟を見る。

ジェーン [DVD]

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ここ最近、映画館で見逃した作品を遅ればせながら数作続けて鑑賞した。『ジェーン』もその中の一つ。


それにしても、映画作品のDVD/ブルーレイ化までのスパンが短過ぎる。
あまり映画館に足を運ぶことのない自分としては有り難い話だけど、こうなってくると映画を映画館で公開することの意味がない気がしなくもない。


自分にとって、「ナタリー・ポートマン主演の西部劇」というだけで本作を手に取る理由は充分だった。


『レオン』から20年以上の年月が経過し、もはや誰もが認める大女優となったナタリーだけど、西部劇に出演するのはこれまで見たことがなかっただけに、カウガール姿の彼女は新鮮な味わいがある。

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自分は西部劇というジャンルにそれほど精通しているわけではないので偉そうなことは言えないのだけれど、正直、本作が長い西部劇の歴史の中で大きな足跡を残すほどの優れた作品であるとは思えなかった。


ナタリー扮する主人公ジェーン、ジェーンの昔の恋人で南北戦争の英雄であるダン(ジョエル・エドガートン)、ジェーンの幸せをおびやかす悪名高きビショップ(ユアン・マクレガー)の三つ巴の関係性がストーリーの柱なのだが、それぞれの性格や秘められた過去の描き方が最後まで紋切り型を脱することができていない。


人物の過去について回想シーンを多用するのは、確かにわかりやすくはあるけれど、それだけ観ている側にチープな印象を与えかねない。


クリント・イーストウッド監督の『許されざる者』などは、主人公の現在と過去に決定的な乖離があるのだけど、監督は主人公の封印された過去を、あくまでも「過去の刻印」として、現在の主人公の表情や立ち居振る舞いから間接的に伝える演出をしていたように思う。


本作においても、個々の役者の技量は申し分ないだけに、監督のさじ加減一つでどうにでもなったのではないか。もっと「氷山の理論」を使ってほしかった。


しかし、こういう弱い者(本作においては女性のジェーン)が武器を取り、自身の幸福をおびやかす巨悪と真っ向から対決する決意をするという単純明快な図式を、今のアメリカ国民が求めているという事実も一方ではまたあるのではないか。


本作の原題が「Jane Got a Gun」というシンプルかつ一抹の躊躇いのないものであるというのも、国際社会の中で失われた「グレート・アメリカ」を取り戻したいという願望の無意識の現れなのかもしれない。


個人的にちょっと心配なのは、ナタリー自身が中心となって本作の製作に関わっているということ。
才女として知られる彼女が先頭に立って本作のような少しフェミニズムの臭いのする映画を撮ってしまうというのは気がかり。


アンジェリーナ・ジョリーのような人としては立派だけど、女優としては面白みに欠ける方向に今後の彼女が舵を切らないことを一ファンとして見守りたいと思う。

女性が主人公の西部劇の個人ベスト。シャロン・ストーンの美しさと、風貌はだらしないけど実は超早撃ちのラッセル・クロウがカッコ良すぎる。↓

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